暑い夏がやってきました。健康に留意し、熱中症などの体調面にも配慮していきましょう。

ところで、全日本私立幼稚園連合会発行の機関誌2025年3月号の冒頭に登載されている「視点」(様々な専門家の方のお話しが掲載されている欄)に、東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太先生が「親子の関係性を希薄化するもの」と題してのお話しが載っておりました。先生は医師として脳科学の専門家ですが、脳科学の観点から教育に関する論文をお書きになっており、私は先生とはこれまで直接お会いしたことはないのですが、10年以上前から先生の論文を注視しかなり読ませていただいておりました。かつてこの欄にも先生の子育ての考えをご紹介したこともあります。

今回の「視点」での先生のお話しは、中身の濃い内容であり、今月と来月にかけて2回に分けてご紹介します。 まず先生は「親子の愛着関係が希薄化し、子ども達のこころが、不安定になってきていることを、ひしひしと感じている。その大きな原因は、社会の変化であることは間違いない。特にICTの発達によって、スマホやタブレッ卜といった機器が家庭に、それも個々人に深く入り込んでしまったことが、深刻な悪影響を与えていると考えている。ベビーカーをおしている親が、子どもの手を引いて散歩している親が、わが子の視線や行動には目もくれず、一心にスマホの画面に見入っている姿、外食のテーブルを家族で囲んでいるのに、それぞれがスマホやゲーム機に夢中になっている姿が、常態化している。これが、私たちが目指してきた、幸せな理想的な社会の在り方なのであろうか。私はうすら寒い気持ちになってしまう。私たちは、どこかで何かを間違ったとしか思えない。」と警鐘をならしておられます。

また先生はそのなかで「こども達のインターネット利用時間を調查した我が国のデータでは、2歳児から6歳児の全てで平均2時間前後という、にわかには信じがたい数字が、並んでいる。」とし、「私たちは、研究の過程で偶然発見してしまった、子ども達のインターネットの過剰利用が、子ども達のこころの発達に深刻な悪影響を与えるという科学的エビデンスを社会に示し、過剰利用への警告を発してきた。」「最初に気がついたのは、仙台市の公立小中学校に通っている全児童・生徒の学力と生活習慣の調査研究の結果であった。家庭でのスマホやタブレットを使ったインターネット利用時間が1時間を超える子ども達の学力が、全ての教科において、利用時間が、長いほど低下していた。この学力の低下は、睡眠時間の短縮や家庭学習時間の短縮による影響よりも、インターネッ卜接続時間の長さの影響が、強いこともわかった。」「衝撃的だったのは、インターネットを学習目的で利用しても、利用時間が1時間を超えると、成績が、低下することであった。」ことも述べています。

まさに衝撃的な研究報告です。近年の小学校ではタブレットなどを利用した新しい学習方法を模索し、それ自体は新しい教育方法なのかも知れません。しかし脳科学の面からの警鐘には耳を傾けるべきものかと思います。 

さて、その続きは、次月の欄で、さらに詳しく述べて参ります。